二胡の種類
 日本では二胡のことを「胡弓」という名称で呼ばれることがありますが、「二胡」と胡弓はまったく別の楽器です。 中国では二胡のことを胡琴(フー・チン)と呼び、弦が2本であるため二胡(アル・フー)とも呼ばれています。胡琴の中にも形状や材料などの違いから二胡、板胡(ヴァン・フー)、京胡(ジン・フー)、高胡(ガオ・フー)、中胡(ジョン・フー)などの種類があり、それぞれ音質が異なります。中でも最もポピュラーなものが二胡で、音程は高胡と中胡の中間になり、様々なジャンルの音楽に適応することが出来ます。
胡弓:
 日本の胡弓は、中国の二胡とは奏法も使用される音楽もまったく異なる独自のものです。胡弓の起源については諸説がありますが、江戸時代から明治大正にかけては、現在の尺八と同じ地位をしめており、琴や三弦との合奏(三曲合奏)に広く用いられていました。
 胡弓の棹(ネック)には紫檀や紅木のほか、花梨などが使われ、胴(ボディー)には桑が使われています。胴や棹の木目には朱色の漆が塗り込んである楽器もあります。駒の材質は煤竹、紅木、象牙などで富士山型をしています。これは真ん中の糸を両端に比べて高く持ち上げるためです。糸は三弦用の絹糸製を流用するか、一番細い糸には胡弓専用の撚りのない物を用います。
 弓の毛には馬の尾の毛を用います。ヴァイオリンの弓のように細くて揃ったものをしっかりと張るのではなく、不揃いの状態で束ねたものを棹の上下の金具にかけ、演奏時に指で調節します。弓の持ち方は二胡、モリンホールなどアジアの擦弦楽器の仲間と同様のジャーマン・スタイルです。
二胡
 二本の弦を張る胡琴が「二胡」の元の意味です。江南地方の曲劇によく使用されるので「南胡」とも呼ばれます。台湾の方では南胡で呼ぶ人が多いようです。二胡は表現力が豊かで、人の声にも真似できるため、地方劇の伴奏などで広汎に使われます。胴に錦蛇の皮を張り、胴の形により六角形、八角形、扁八角、楕円などの種類があります。
板胡
 上面が蛇皮でなく柾目の針葉樹の板となっているため板胡と呼ばれます。北方の評劇・豫劇の伴奏および独奏・合奏に用いられます。棹は堅木を使い、共鳴胴が円筒形ではなく、球形に近い椰子の殻で作られています。高音板胡と中音板胡に分類され、高音板胡の調弦は、外弦A、内弦Dで、中音板胡の調弦は、外弦D、内弦Gです。地方演劇の場合、五度ではなく四度を調弦することもあります。板胡の音色は明快・豪放で独奏楽器として使われています。
高胡
 主に広東音楽の独奏および合奏用。高胡の構造は二胡と似ていますが、音域が4ないし5度高く、開放弦は一般的にE音とA音です。二胡より明るく、官能的な音色がします。
中胡
 構造は二胡とほとんど同じで、演奏方法も一緒です。独奏曲は少なく、楽団でもあまり主要な楽器ではないので、中胡を専攻で練習する人は少ないようです。低音に豊満感があり、高音域の雑音を抑え、ビオラ風の美しい音色を奏でることが出来ます。
京胡
 清の乾隆時代から、京劇の発展にしたがって、民間の弦楽器から生まれ、200年以上の歴史があります。当時は棹が短く、弓は柔らかいものが使用されていましたが、十九世紀から固い弓が使われました。弦が二本あって、棹と胴体はすべて竹で作られており、二胡と比べるとかなり軽量です。胴の一端に青蛇の皮(薄く破れやすい物)を張り、千斤はフックで弦をひき、糸で琴竿に固定します。音色は高くて強烈的な力があり、京劇の歌には非常に似合います。